山廃仕込
乳酸酸性の条件下で、健全な酵母を増殖させアルコール発酵を行うことが、清酒製造の技術的特徴です。
酵母を最初に増殖させる過程が「酒母」(酛(もと)ともいう)ですが、「速醸系酒母」と「生酛系酒母」に大別されます。
速醸系酒母は、スタート時に製成品の乳酸を添加して、10日〜2週間ほどでできるのに対し、生酛系酒母は、自然に存在する乳酸菌によって乳酸を作り出すため、約1ヶ月の時間がかかります。
生酛系酒母では、まず硝酸還元菌が増殖し水中の亜硝酸を硝酸に変え、これによりバクテリア類が死滅し、硝酸還元菌も自らが作った硝酸により死滅します。
この状態で乳酸菌のみが増殖し、乳酸菌が乳酸を作り、phを酸性にしていき、これにより、野生酵母が死滅し、乳酸菌も自らが作った乳酸により死滅します。
この乳酸酸性条件下で、増殖できるのは清酒酵母のみです。
ここで清酒酵母を植菌して健全に増殖させてゆきます。
生もと系酒母のなかで、蒸米を櫂によってすりつぶす「山卸し」という工程を行うものが「生もと酒母」、「櫂でつぶすな麹で溶かせ」という考え方により山卸しを行わないものが山卸し廃止酒母、即ち「山廃酒母」です。
また「山廃酒母」による酒造りを「山廃仕込」といいます。
発酵管理の安全性が、高く且つ現代的な嗜好に合いやすいのは「速醸系酒母」で、全国的には大部分こちらにより造られておりますが、「生もと系酒母」は時間と手間がかかるだけに、酸味の多い濃醇で重厚な味わいの酒が造れます。